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プーアル茶の茶廠比べ~7532:孟海、昌泰~
小葉茶葉プーアル茶を代表する名作レシピ、7532の飲み比べです。
今回飲み比べるプーアル茶は元祖7532である孟海茶廠の大益茶 7532と金賞受賞茶である昌泰茶業の作る7532、昌泰號 7538の二つを飲み比べます。
- 茶の評価
どちらも7532らしい茶作りであり、7532の名に恥じぬクオリティに仕上がっています。
どちらも申し分のない品質の茶葉で作られているので「5」としていますが、昌泰號 7538が僅差で上という判断です。
一口に昌泰號 7538といってもクオリティにばらつきがありますが、当店の昌泰號 7538は金賞受賞茶の第一批として抜群のクオリティを持っています。一方の大益茶 7532は風味の複雑さなどブレンド技術を基盤とした7532のおいしさとして申し分がなく、茶葉の品質ももちろん申し分ありません。そのため7532らしさとしてはこちらに「5」をつけています(なんといっても元祖です)。
熟成度は大益茶 7532は「2」、昌泰號 7538には「3」をつけています。新茶である大益茶 7532の2は妥当なところですが、10年もののプーアル茶である昌泰號 7538の「3」は低すぎるように見えますが、これは当店が仕入れる前の保存環境が温度が低く、乾燥していたことによるものです。
お買い得度としては茶葉の品質、そして当店が収蔵した5年前の価値を元にした価格である昌泰號 7538と現在のプーアル茶の価格付である大益茶 7532では昌泰號 7538が抜群です。一方で10年後の価値を見比べると大益茶 7532の将来は約束されています。これは大益ブランドの持つ圧倒的なブランド力の成せる技ですが、転売を目的とするなど、特別な理由がないのでなければ考える必要はないかもしれません。もちろん10年後のおいしさの面ではどちらも存分のポテンシャルを持っています。
- レシピ番号7532について
- 3級茶葉を主に使用して作られた7532は小葉茶葉レシピの代表であり、プーアル茶の中でも知られた名作レシピです。小緑印円茶の流れを汲み、若芽の多い配方で作られた高級な作りで、香りたつ風味の高さが特徴です。1980年代には銘牌と呼ばれる7532が多くあり、中でも雪印青餅は特別の評価を受けています。
- 今回比べたお茶
今回飲み比べるのは孟海茶廠の元祖7532と昌泰茶業の金賞受賞茶である昌泰號 7538です。
大益茶 7532
孟海茶廠では数年に一度7532を作っていますが、今回飲み比べるのは2016年に作られた7532です 。この7532は歴史的名牌雪印青餅の復刻品と銘打たれています。
雲南昌泰號プーアル茶生餅 7538
2007年に作られた昌泰茶業の7532です。最後の数字が「2」ではなく昌泰茶業の番号である「8」になっています。2007年の昌泰茶業の目玉プーアル茶として作られ、茶祖孔明金像賞を受賞したできのいいプーアル茶です。
- 餅面と茶葉
どちらも7532らしく餅面には若芽を多く見ることができます。昌泰號 7538の方がやや若芽が多いでしょうか。そして芽茎も多くあるようです。芽茎を多く含ませるのは易武號から続く號級茶作りを旨とする昌泰茶業の茶作りの特徴と言えるでしょう。とはいえ、これらの違いはわずかなものと言っていいかもしれません。
二つのプーアル茶の大きな違いとして、9年の熟成期間の違いがあり、その違いは餅面に現れていることが一目見てわかります。10年熟成である昌泰號 7532の餅面には赤味が現れている一方、2016年に作られた大益茶 7532には黄緑味がかかっています。 気温が低く乾燥した北京での熟成が長かった昌泰號 7538は熟成が浅く仕上がっています。
それでも長い熟成の間に滲み出てきた茶の成分が内飛にしみています。また、餅茶にもやや緩みが見られ崩しやすくなっています。
2016年に作られた大益茶 7532ですが、「新茶」というよりはほのかな熟成感が見られます。
これは2013年以降の大益プーアル茶に見られる新世代製法によリます。この製法では、青殺前に渥黄の工程を長めにとり軽発酵をさせています。これは出来上がり直後の飲み口に大きく影響しています。- プーアル茶を淹れる
- 左が昌泰號 7538、右が大益茶 7532となります。水色はどちらも赤く色づいています。
昌泰號 7538は熟成による色合いですが、やはり10年熟成プーアル茶にしては色づきが浅めです。これは当店以前の熟成環境がごく乾燥していたためです。一方の大益茶 7532の色合いは製茶方法によるものです。新茶ですが、軽発酵を行なっているので水色によく赤味が差しています。
とはいえ、写真には違いが現れていませんが、大駅茶 7532にはやや青味があります。なので、大益茶 7538の水色は寒色系の印象となり、昌泰號 7538の方がより赤味の強い印象です。また、昌泰號 7538の方が透明感があります。
どちらのプーアル茶からもトップノーズに蜜香が立ち上ります。
昌泰號 7538は果蜜香であり、大益茶 7532は花蜜香です。この違いは熟成度の違いがそのまま現れていると言えるでしょう。昌泰號 7538の香りはより純正で果蜜香がよく続きますが、大益茶 7532の香りはより複雑です。
蜜香の奥にはほのかな薫香があります。これは欠点となるような香りではなく、アクセントとしてプーアル茶にリズムを与えています。そして、煎がすすむにつれて蜜香は引いていき、それに変わって参香が香りの主役となっていきます。
昌泰號 7538は煎が進んでも純正な蜜香です。どちらのプーアル茶も香りがよく続き、質の高さが現れています。
味わいはどちらも飲みやすく、おいしく仕上がっています。
熟成が進んでいる昌泰號 7538は苦味渋みが引きまろ味が出て、甘みが引き立っています。一方の大益茶 7532は苦味渋みを抑えたつくりなので新茶ですが飲みやすいですが、まだ青味を感じます。
どちらも若芽をふんだんに使っているので滋味豊かで雲南大葉種のおいしさを満喫できます。
煎が進んでくると昌泰號 7538の飲み口はより純正に、しかしそれまではほかの香りの奥に潜んでいた陳香を感じてきます。今後のさらなる熟成が楽しみです。
大益茶 7532も煎が進むにつれより複雑な風味が感じやすくなり、そのおいしさの表情を変化させていきます。こちらの熟成にはまだしばらく時間がかかりそうです。 - 葉底を見る
- 改めて葉底を見て見ましたが、よく似た葉底です。
細かな若芽、小さな若葉そして3-6級メインと揃った茶葉たち。大きめの茶葉もありますが、その存在感も同じ印象です。
とはいえ、異なる点もあります。
昌泰號 7538は昌泰茶業の茶作りらしく、芽茎がやや多くなっています。もちろん熟成度の違いも見えます。浅めの熟成度とはいえ、全体的に色づいてきている昌泰號 7538は経年変化による褐色系の色付きである一方、大益茶 7532は製茶時の軽醗酵による黄色味を帯びた葉底です。最新の大益茶の茶作りがよくわかる葉底と言えるでしょう。 - まとめ
- 孟海茶廠が生み出した名レシピ7532。
雪印青餅の復刻品である大益茶 7532も金賞受賞茶で2007年の昌泰茶業の一押しプーアル茶の第一批である昌泰號 7538。どちらも7532の約束を実直にとらえた茶作りで、何よりその茶の質の高さが際立ちます。
今楽しむプーアル茶として、10年後を狙った収蔵茶(昌泰號 7538は五年後から楽しみ)として自信を持ってオススメのできる名盤プーアル茶です。