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プーアル茶の茶廠を茶山で比べる〜易武山〜

同じ山をテーマにしたお茶でも作り手が変わればその風味は大きく異なります。
今回は最も有名な茶山、易武山のお茶を昌泰茶業の易昌號珍品と国艶茶廠の国艶境界易武山で見てみます。

トップ写真今回比較したお茶は

です。

易武山について
易武山は旧六大茶山の中で最も有名な茶山で、雲省部にある景洪市から東北東110kmのところに位置します。

易武は中国語で”Yi-wu”と発音します。これはもともとはダイ族の言葉で「美しい蛇」という意味があります。そして、その伝説の中で易武山は「花蛇王」の住む場所でした。

易武山は年間の平均気温が18度と温暖で降水量が多いので豊かな自然を育みます。そして、易武山は霧が深いことでも知られそれが程よく日光を遮り、渋味が少なく優しい甘みのある茶葉を育むといわれます。そんな易武山のお茶の味は「柔和」とされ、苦味渋味が控えめですが、香り高い飲みやすいお茶です。
茶葉の比較
茶葉写真どちらも大振りの品質のいい茶葉を使用していることが一目見てわかります。とはいえ大きな違いもすぐ目につきます。まず、その色合いに大きな違いが有ります。国艶境界易武山は全体的に白が目立つ緑色になっている一方、易昌號珍品は茶色かかった暗緑色になっています。その他にも国艶境界易武山の餅茶は非常に緩く作られていることも伺えます。
茶葉写真裏これらの違いはまず、国艶境界易武山は毫の多い一芽一葉を特に意識してふんだんに使用していることと、柔らかい若芽を使用しているのと、毫の見た目を活かすためにも柔念度も弱めに仕上げています。そのため毫はしっかりと茶葉に残ったままになります。そして、さらに立体感のある餅茶を演出するため緊圧度(押し固め度)も緩めに仕上げられていて、最近流行のお茶作りといえます。
一方、易昌號珍品はこちらも最高級クラスの茶葉を使用していますが、易昌號らしいしっかりとした作りとブレンドになっており、若芽だけでなく、熟成をにらんでやや成長した茶葉もブレンドされています。そのため、柔念もしっかりとされ、緊圧度も国艶境界易武山に比べるとかっちり仕上がっていて昔ながらの伝統のお茶作りといった感じです。
お茶を入れる
お茶写真どちらもすばらしい仕上がりで期待がもてます。さっそくお茶を入れてみましょう。
お茶を入れるとどちらも易武山らしい華やかながらも落ち着いた香りが立ち上ります。国艶境界易武山は蜜香をまず感じる茶葉そのものの香りであり、苦味の少ない一芽一葉らしい風味を感じます。一方、易昌號珍品はブレンドにより、茶葉の香りもより複雑に昌泰茶業らしいスパイシーな香りづくりがされています。
次に水色ですが、易昌號珍品、国艶境界易武山ともにきれいな黄金色ですが、写真でも見られるよう易昌號珍品の水色はより濃くなっています。この辺りは作りの違いでしょうが、年数の違いもあります。
お茶を味わう
さて、味見です。
まずは国艶境界易武山から。お茶を口に入れるとお茶の香りが口いっぱいに広がります。お茶の味は易武山らしい、甘みが有り、苦味が少なく、程よい渋味といった感じでしょうか。易武山のお茶にしてもやや甘みを強く感じる印象です。その味わいは一芽一葉らしい味といえるでしょう。
一方易昌號珍品は国艶境界易武山に比べると甘みが一歩探り苦味と渋味が程よく前に出てきてお茶らしい味に仕上がっています。このお茶作りのバランスのよさはさすが昌泰というべきでしょう。しっかりとした茶葉の味、そして昌泰らしい風味付けがしっかりとされています。
どちらもおいしいお茶ですが、易昌號珍品はしっかりとした味わいが有る一方、国艶境界易武山は一芽一葉らしく飲みやすい近い作りになっています。
葉底の観察
葉底_写真次はお茶を入れた後の茶葉、葉底の確認をしみましょう。
葉底を広げると一目でどちらも高い品質の茶葉を使用していることが再確認することができます。とはいえそれぞれ異なる点がいくつも有ります。
まず茶葉のサイズが異なります。易昌號珍品の茶葉が明らかに大きくなっています。そして色も違います。国艶境界易武山は明るい緑色である一方、易昌號珍品は深緑色になっています。そして茶葉の質感も異なります。国艶境界易武山の茶葉のほうがふっくらとしている一方、易昌號珍品の茶葉はよくよじれています。
易昌號葉底_写真葉底_写真それぞれについてみてみましょう。
まず茶葉のサイズの違いですが、これはその作りの違いといえるかもしれません。易昌號は野生喬木の一芽一葉と一芽二葉を使用して作ったお茶なので非常に大きな茶葉もあり、豪快な易昌號らしいお茶作りになっています。一方、国艶境界易武山にも一芽二葉を見ますが、より一芽一葉の比率が高くなっているお茶作りです。そのため芽が多く、茶葉は小さめとなっています。
次に色ですが、ここにも茶葉の違いを見ることができます。国艶境界易武山の葉底をよく見ると2種類の色を見ることができます。これは芽の部分とより成長した茶葉の部分です。とはいえ、成長した茶葉であっても易昌號珍品の茶葉の色とは異なります。これは易昌號珍品の茶樹の違いで、易昌號の茶葉は他の易昌號の茶葉の色とも異なっています。
最後に質感ですが、茶葉の種類の違いによる質感の違いは有りますが、それ以上に違いが見受けられるのは柔念度です。易昌號珍品の茶葉はしっかりと揉捻されよじれて茶葉を開くのが非常に難しくなっている一方、国艶境界易武山はそこまでしっかりと揉捻されず結果ふっくらとした状態の茶葉になっています。 揉捻度は茶葉の若さによって調節されるので、より若芽の多い国艶境界易武山は弱めの柔念度に仕上げられています。またこれは近年のはやりで、茶葉の姿をよく仕上げるために揉捻度を弱めに仕上げて茶葉のふっくらときれいに仕上げてあります。
考察と結論
以上二つのお茶を観察してきましたが、まとめると
易昌號珍品 国艶境界易武山
香り 蜜香の裏に複雑な香り 華やかな蜜香と梅香、純粋な香
甘み、苦味、渋味のバランスのとれたお茶らしい味わい 甘みが有り、苦味渋味が控えめな易武茶葉らしい味わい。
水色 濃い黄金色 黄金色
葉底 しっかりとした揉捻、大振りの茶葉 弱い揉捻、より多い若芽
以上のようになります。もう少し深く見てみましょう。
全体的なまとめとしては国艶境界易武山は茶葉のもつ味をだしたお茶作りといえる一方、易昌號珍品はより「お茶作り」をしているといえるでしょう。その違いは茶葉の違いに見ることができます。国艶境界易武山の茶葉はきれいに仕上がっていて見た目から茶葉そのものといえる一方、易昌號珍品はしっかりと揉まれています。これらの違いが二つのお茶作りの大きな違いといえるでしょう。
まず、餅茶の状態と結びつけてみます。易昌號珍品はしっかりと揉捻されているため、しっかりと隙間なくプレスされ、緊圧度が標準的な一方、国艶境界易武山は柔念度が弱くいため茶葉がふっくらと残り、そのため茶葉に弾力が有り、結果緊圧度が低くなっています。
次に水色ですが易昌號珍品の方が濃くでています。これは茶葉がしっかりと揉まれているためお茶の成分が抽出されやすくなっているためと一年ですが年数の違いもあります。そして味わいですが国艶境界易武山の茶葉に比べて易昌號の茶葉は易昌號のブレンドとしっかりとした揉捻といった具合に人の手が入っているので、その分風味も茶葉の持ち味に加えて昌泰らしい風味がプラスされています。
簡単にまとまると、このような違いが二つのお茶の大きな違いになるでしょう。もちろんこれだけが違いでは有りませんが、細かい点まで比較を始めると限りがなくなってしまうのでこの辺りにしておきます。

お茶_写真以上ざっと二つのお茶の違いを見てみましたが、どちらもそれぞれ特徴のあるおいしい茶です。一芽一葉茶葉の味を味わいたいのであれば国艶境界易武山を、お茶作りという物を見たい方は易昌號珍品をお勧めします。
どちらもそれぞれ特徴があり最高級の名にふさわしいお茶です。私の好みは飲み慣れた易昌號珍品です。お茶という物は自然が作り出す物ですが、そこに人の手が入り風味をだして行くこともお茶の醍醐味です。
しかし、国艶境界易武山は一芽一葉のお茶作りで私がまだあまり飲んだことがないお茶です。なので、この非常にポテンシャルの高いお茶がこの先どのように熟成されていくのか非常に楽しみでもあります。

今回飲み比べたお茶

C0901
易昌號易武七子餅茶 珍品
Yì Chāng Hào Yì Wǔ Qī Zǐ Bǐng Chá Jí Pǐn

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K0902
国艶境界 易武山
Guó Yàn Jìng Jiè Yì Wǔ

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