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易昌號易武七子餅茶 復刻版の違いを見る
09年に元祖易昌號を記念して作られた易昌號易武七子餅茶 復刻版。
七枚一筒セットのこのお茶、一枚一枚がそれぞれ特徴を持っています。ここではその特徴を伝えるために、飲み比べをしてみました。
易昌號について
易昌號は易武山の野生茶葉を使用して作られたお茶です。
中華民国成立以降、プーアル茶作りは政府の管理下で行われていました。管理生産が始まった1970年代頃は易武山の最高級茶葉を使用したプーアル茶作りがされていましたが、その後文化大革命などの影響でその効率の悪い贅沢品である高級プーアル茶の生産はだんだんと少なくなり1990年代後半には途絶えていました。
そんな中、昌泰茶業の創立者陳世懷と張芸林は1999年昌泰茶行を創立し、その翌年1999年、最初の易昌號を世に送り出します。
今では考えられないことですが、当時は野生茶葉の価格は茶園茶葉よりも低く、二人はそんな誰も目を付けていない易武山の野生茶葉を使用してプーアル茶を作ります。そのため出来上がった易昌號のお茶のクオリティーは最高で販売開始とともに香港、台湾で一世を風靡し、瞬く間に昌泰茶業の評判を上げました。そして、その発売から10年以上たった現在、易昌號の評判はその熟成とともにますます高まっています。易昌號の評価は「口感豊富、茶韻十足」とされ、その豊かな味わいと、リッチな風味で表され長年の熟成に耐えるその品質の高さが特筆されます。
初代易昌號には宋体版と篆体版があり、それぞれに極品、精品、正品があります。
宋体版と篆体版の違いはパッケージが異なり、またお茶自体も違いがあります。その他にも、内票の有無など違いがあり、コレクションとしての価値は変わってきます。
今回飲み比べるプーアル茶に付いて
初代易昌號から10周年を迎えた2009年、昌泰茶業は易昌號易武七子餅茶 復刻品を世に送り出します。 このお茶は初代易昌號のレシピを完全に再現しただけでなく、易昌號極品をさらに上回る最高品位茶、易昌號篆体版珍品も同封しています。
このお茶には、初代易昌號を再現した以下の六枚
◎宋体版/篆体版 極品
◎宋体版/篆体版 精品
◎宋体版/篆体版 正品
そして、昌泰茶業が今作る最高品位茶
◎篆体版 珍品
以上を加えた七枚一筒のお茶となります。
初代易昌號と同様、パッケージの違う宋体版と篆体版ではそのお茶は異なりますが、まとめやすいように今回飲み比べるお茶は当店で販売する易昌號易武七子餅茶 復刻品 宋体セットに含まれるお茶を飲み比べていきます。
◎宋体版 極品
◎宋体版 精品
◎宋体版 正品
◎篆体版 珍品
以上4種類のお茶を飲み比べて易昌號易武七子餅茶 復刻版の詳細を見て行きます。
使用されている茶葉に付いて
飲み比べる前に、まずはそれぞれのお茶の違いを商品情報から見てみましょう。
お茶 | 茶葉 |
---|---|
宋体版 極品 | 一芽一葉、一芽二葉 |
宋体版 精品 | 一芽一葉、一芽二葉 |
宋体版 正品 | 一芽一葉、一芽二葉、一芽三葉 |
篆体版 珍品 | 一芽一葉、一芽二葉 |
正品のみ一芽三葉までの茶葉を使用されていて、その他のお茶には一見違いを見ることができません。しかし、その一見同じに見えるお茶に潜むお茶ごとの違いを飲み比べによって見て行きましょう。
外見の違いを見る
どのお茶もその餅面から立派な茶葉を使用していることが伺えます。そしてどのお茶もまだまだフレッシュな若い茶葉らしい香を持っています。しかし、乾燥した茶葉からではその違いを伺うことはあまりできません。
そういったプーアル茶を見分けるには「内飛」が重要となってきます。内飛とは茶葉の中に埋もれている紙片で、偽造防止の役にもたっています。易昌號易武七子餅茶 復刻版にはいっている内飛はそれぞれ以下のようになります。
お茶 | 内飛 |
---|---|
篆体版 珍品 | 緑色枠に緑色文字 |
宋体版/篆体版 極品 | 緑色の枠に緑色文字 |
宋体版/篆体版 精品 | 黒色枠に緑色文字 |
宋体版/篆体版 正品 | 黒色枠に青色文字 |
となります。とはいえ、篆体版珍品は茶葉の中に完全に埋もれているのでまだ確認できていませんが…
プーアル茶を入れる
華やかな香りがあたり一面に広がります。若い茶葉なのでどのお茶も蘭香が基本の香りとなります。珍品、極品、精品はその香はほとんど一緒ですが、精品に比べると珍品と極品がその香の強さで、やや勝ちます。精品は香の種類もわずかに異なり珍品、極品のような強烈とも言える香に比べると穏やかで優しさのある香となっています。
次に水色ですが、写真では伝わりにくいですが、どれも黄金色ですが珍品、極品、精品、正品で少しずつ濃くなっています。ディティールでは、珍品は水色が濃くなっていましたが、少し色が沈んだ印象があり、極品は逆に水色に明るい印象がありました。
お茶の味を見る
どのお茶もその強い茶気を感じるお茶です。
苦味渋味がこれでもか!と言うほどに溢れ出ていて、特に珍品、極品の味の強さは目を見張るものがありました。香でもそうでしたが、正品は珍品、極品、精品と比べると方向性の違うところがあり、甘みがあり、その分苦味と渋味が押さえられている風味のお茶です。これは一芽三葉を使用しているお茶なのでその分成長した茶葉の味であると考えることができます。
とはいえ、正直なところどのお茶もまだまだ若すぎるため苦味と渋味が強く、楽しみながら飲むとまでは言えません。しかし、この強すぎる茶気が時の経過とともに穏やかになり、複雑玄妙な味わいへと変化しています。
当店で扱う07年産の易昌號を初めて飲んだときは同じような印象を受けました。そのお茶も現在では味は落ち着き、まだ陳茶の風味とは行きませんが、若い生茶の中ではぴか一においしいお茶へと変化しました。
このお茶は07年産易昌號よりも茶気が強い印象なので飲みやすくなるにはもう少し時間がかかるかもしれませんが、その味わいは07年産易昌號よりもさらに期待することができます。これについては別途の見比べをしてみなくてはいけませんね。
葉底の観察
茶葉の比較をするのに最も直接的な方法が葉底(お茶を入れた後の茶葉)の観察です。
大きな茶葉をふんだんに使ったこのお茶を形をキレイに残して崩すのは難しく、今回はかけた茶葉が多くなってしまいました。左から珍品、極品、精品、正品となっています。どの葉底も大振りの茶葉とふっくらとした芽茎で構成されており、すばらしい茶葉であることが分かります。
もう少し詳細を見て行くと、商品情報にある通り珍品、極品、精品は一芽二葉までの茶葉を使用して作られており、正品は一芽三葉までを使用して作られていることが分かります。茶葉の大きさを比べると精品が小振り(それでも十分に大きいのですが)で、正品の方が大振りの茶葉が使用されていることが見受けられます。
これは正品には精品に使用されている一芽二葉までの茶葉よりも成長した、一芽三葉までの茶葉が使われているためです。より成長した茶葉はお茶の風味が弱くなりますが、その分甘みなどを他の要素を感じられるお茶になります。
次に極品と精品とを比べてみます。
極品には精品と同程度のサイズの茶葉が見られる一方、初代易武昌號でも見られたような巨大な茶葉を見つけることができます。そのサイズは圧巻で等級で言えば十級以上、大きさで8センチ以上もあるサイズの茶葉を見ることができます。そして、含まれる芽茎も精品に比べると一回り大きくふっくらと肥えたものになっています。
最後に珍品と極品を比べてみましょう。
大きいサイズの茶葉は形よく崩すのが難しいので、形のいい茶葉をとるために改めて茶葉を崩し、お茶を入れてみました。左側が篆体版珍品、右側が宋体版極品です。
苦労した甲斐あって、篆体版珍品の葉底は迫力のあるものでした。篆体版珍品の葉底は一芽一葉と太く柔らかな芽茎、そして巨大な茶葉で構成されていると言っても言い過ぎではないような立派な葉底です。極品でたまに見かける特大の茶葉が普通にザクザクと出てきます。極品の巨大な茶葉を上回る巨大な茶葉。本当に一芽二葉茶葉なのだろうか?とも思いたくなってしまいますが、一番下に見える一芽二葉の茶葉の巨大さを見れば納得できるでしょう。そしてツンと張りのある柔らかな若芽はこのお茶の風味の高さを証明しているようです。もちろん、写真右側の極品もすばらしい葉底です。大振りの茶葉がぎっしりと詰まったお茶で、印象としては07年易昌號珍品よりも力のある葉底となっています。
昌泰茶業のチラシの中ではこの篆体版珍品を「頂品」と評しているものあるようにまさに最高のお茶といってもいいでしょう。
篆体版珍品は07年易昌號珍品とは明らかに頭一つ抜けた仕上がりのお茶となっています。
まとめ
今回のみ比べた昌泰茶業は易昌號易武七子餅茶 復刻品。
ざっと見た通り、それぞれのお茶にはグレードごと特徴のあるお茶作りがされていました。珍品、極品、精品は一芽二葉まで、そして正品は一芽三葉までを使用しています。一芽二葉のような若い茶葉はお茶成分をふんだんに含み、そのお茶の風味はより高いものになります。それに対して一芽三葉のようにもう少し成長した茶葉には糖分も多くなり、お茶の風味を優しく、まろやかなものにします。
そして、一芽二葉までを使用して作られている珍品、極品、精品にもその違いはありました。精品の茶葉は珍品、極品にくらべると一回り小さいものでしたが、これは茶樹の樹齢の違いによるものだと考えます。そして珍品と極品にも違いを見ることができました。珍品の茶葉の見事さは今までに見たことがないレベルの茶葉でした。この違いは極品よりもさらに選び抜かれた茶葉を使用しているためであると考えます。
お茶 | 味/香 | 葉底 |
---|---|---|
篆体版 珍品 | 苦味、渋味、茶気最上 | 若芽の多い、極大の茶葉 |
宋体版 極品 | 苦味、渋味、茶気最上 | 極大の茶葉を含む一芽二葉の葉底 |
宋体版 精品 | 苦味、渋味、茶気強い | 一芽二葉のバランスの良い葉底 |
宋体版 正品 | 強い茶気、三葉のためややおっとり | 精品+一芽三葉の特大の茶葉 |
どのお茶も、その他のお茶を寄せ付けない圧倒的な茶葉で期待通りのものでしたが、まだ新茶なので今すぐ飲むには苦味と渋味が強すぎて向きません。しかし苦味、渋味が落ち着くそう遠くはない将来のことを考えると非常に楽しみなお茶です。
そして、さらに熟成が進み陳化を果たした時のことを考えるとつい、にやりとしたくなるようなすばらしい出来のまさに最高級プーアル生茶です。