プーアル茶の茶樹のちがい
プーアル茶は雲南大葉種の茶葉を使用して作られます。一口に雲南大葉種と言ってもその範囲は広く、様々なタイプ、品種、そして育成条件によってお茶の味わいは変わってきます。ここではプーアル茶の茶樹に焦点を当ててみてみましょう。
野生種と栽培種
プーアル茶の原料は雲南大葉種を使用することとされています(実際は中葉樹、小葉樹を使用したプーアル茶もありますが)雲南大葉種茶樹は大きく二つ、野生種と栽培種に分類されます。
野生種には
大理茶(Cameria Taliensis Melchior)
厚軸茶(Cameria Crassicolumna)
大廠茶(Cameria Tachangensis)
など
栽培種には
プーアル茶(Cameria Sinensis var, Assamica)
白毛茶の変種(Cameria Sinensis var. Pubilimba)
などがあります。
野生種と栽培種の大きな違いはそれぞれ喬木と灌木と呼ばれるようにその背の高さに大きな違いがあります。元々茶樹は背の高い木だったのですが、それが長い歴史の間に改良され人の手による手入れが入り小さくなっています。なので栽培種(灌木)は背が低く、横に成長すると言った感があり、それに対して野生種は樹木らしく上へ、背が高く成長していきます。
茶葉のサイズはどちらも一口に大葉種に分類されていますが、その中でもばらつきがあり樹高の高い野生種の茶葉はさらに大きくなり、カテキンなどのお茶成分が多く含まれているとされます。
また、収量の面でも栽培種では茶葉の密度が高いので収量はおおきく、また収穫もしやすい一方、野生種では茶葉の密度は低く、さらに樹高も高いので采摘しにくいので収量は少なくなります。そのため、野生種であっても枝を下向きに低く成長するように手を加えられているものもあります。
プーアル茶の品種
さて、学術的には以上のように分類されますが、プーアル茶を楽しむとき茶樹の学名をあまり気にする人はいません。とはいえ、もう少し大きい括り、品種の違いであれば気にする人はもう少し増えそうです。 雲南大葉種喬木型の品種にはいくつもあるのですが、国家級品種である以下の3つを見てみましょう。
- 孟海大葉種
- 鳳慶大葉種
- 孟庫大葉種
- 孟海大葉種
- 西双版納孟海県格朗河郷南糯山原産で西双版納や思芽地区などの雲南省南部に分布しています。自然生育下で樹高2-20mで枝振りもよく、直径1.8-5.2mまで生育します。茶葉は楕円または長楕円で光沢のある緑色、しっかりと厚みがありますが柔らかです。若芽は黄緑色で柔毛も多くなります。そのため風味豊かなお茶で茶葉もふっくらと肥えているので甘みがありしっかりとしたお茶になります。
- 鳳慶大葉種
- 臨滄市鳳慶県大寺郷鳳山鎮発祥とされ、鳳慶市や昌寧周辺など主に雲南西部に分布します。歴史は古く、明朝の徐霞客遊記に「太華茶」と記載されているお茶になります。茶葉は長楕円もしくは楕円形で、色は潤いのある緑色で柔らかく、その他の品種に比べて茶葉が薄く、その分重量は軽くなります。茶葉が薄く柔らかい分、揉捻しやすいので加工しやすいお茶です。若芽は緑色で柔らかく、びっしりと柔毛に覆われていてそのため銀毫茶や金毫茶を作るのに適した品種とされます。揉捻しやすく、毫も多いので香り高くし上がりますが、タンニンが少なく飲みやすいお茶に仕上がります。
- 孟庫大葉種
- 臨滄市双江県孟庫鎮発祥とされ、臨滄市周辺に分布しています。自然生育下では樹高は4-30m、直径3-12mまで生育します。茶葉は楕円形、色は艶のある緑または深緑で、厚みはありますが、柔らかめの茶葉です。若芽は黄緑色で柔らかくふっくらとして柔毛に覆われています。甘みも風味も強く、お茶の味はとても良く仕上がります。
この他にも様々な品種があって、喬木型では瀾滄大葉種、景東大葉種などがあり、灌木型では照通苔茶などがあります。さらに新しく開発された品種としては喬木型の雲坑10号、長葉白毫などがあります。
生育状況による茶樹の分類
以上が簡単なお茶の品種でしたがこれも気にする人は少ないでしょう。というか表示もされていないので確認することもできませんし、同じ品種であっても生育状況によって全然味が異なるのであまり意味がありません。では実際に私たちが確認できる茶樹の種類として何があるかというと、茶区(茶山)と生育状況になります。による区別になります。ということで生育状況による茶樹の区別についてみてみましょう。他の食品にも通じることがありますが、お茶も基本的に自然に近い物ほどよい物とされます。
- 原野型野生喬木
- これは原野の中にある人の手に触れられていない茶樹のことです。 手に触れられていないのでお茶にされていませんが、お茶にしたとしても変種して人に対して有毒であることもあるので注意が必要です。
- 野生喬木
- 野生喬木はその名から連想されるように、もともとは人の手で管理されていなかった茶樹をさします。樹齢は古く(百年以上、千年以上のものも)代々決まった茶農家に属すものとされ、その農家のみがお茶を摘み取ることができます(色々なケースがありますが)。樹齢の長いものはお茶成分を多く含み味が良いとされ、その数が少ないこともあり大事に扱われています。茶樹によけいなストレスを与えないよう、収穫は月に一度程度です。
- 野放喬木
-
野生喬木の種から増やした茶樹になります。生育状態は農薬や肥料は与えられず放置、自然のままの状態で生育されます。通常樹齢はそれなりに古く(50年以上)、古くなった物ほどよい物とされます。野生喬木と同じ種類の樹なので味がよいとされますが、同じ原木の種をつかっても樹高も味も違ってくるそうです。こちらは月に3回ほど茶摘みが行われるそうです。
プーアル茶業界の慣例としてしばしば野生喬木と野放喬木ともに野生茶と呼ばれます。 - 荒山茶
- 以前茶園だったところが放棄され、自然に近い状態に戻った茶樹です。長年放棄されていたので、人の手が入ることによる様々な影響がなくなって自然の状態に近くなったと見なされ通常の茶園樹よりも高値で取引されます。長年手つかずの状態だったので灌木といえどそれなりに背が高くなり、茶摘みも一仕事になります。
- 茶園
- 茶園で栽培されているものは野生種に手が加えられたもので背が低く、生育も速く、収量も多いものとなります。茶園は1950年代後半の大躍進政策以降推奨される様になりました。その理由は野生種は背が高く、作業効率の悪かったので、より効率よく茶作りができるためです。一方、野生種は背を低く切り倒されたり、他の栽培種に植え替えられたりしました。そして、栽培型茶樹の品種改良等によってその品質が上がってくると、茶園茶がプーアル茶作りにおいてより良い品種と見なされ高い値で取引されるようになります。1990年代後半になって再び野生種が見直されるまでこの傾向は続きました。
以上のような分類になりますが、野生種が好まれるにはいくつかの理由があります。まず、お茶の原種に近いのでお茶の成分を多く含んでいるとされます。さらに野生種はその長い樹齢のなかで風味が変化し、独特の風味を持っています。さらに野生種は基本手つかず=無肥料、無農薬で生育されているので汚染の心配が無く安全で、これぞ有機食品になり好まれます。