配方、プーアル茶の芸術。
プーアル茶において、ブレンディングは最も重要な技術の一つです。
中国無形文化遺産に登録されている大益の製茶技術の中でもブレンディング、そして発酵技術の二つがその核心技術とされています。
配方とレシピ番号
プーアル茶においてブレンディングは「配方」と呼ばれ、その基本は「揚長避短」、つまり茶葉が持つ個性を伸ばしながら欠点を補うことを基本としていますが、思い描く理想の味わいを実現するための大事な技術でもあります。
最も有名なレシピ、7542はプーアル茶作りにちょうどいい四級茶葉をボディに、表面にはより等級の等級の高い茶葉をブレンドしています。
熟成に向く四級茶葉に香りと苦みのエッセンスを加えた7542は出来立ては苦みが強いですが、熟成を経ることで味わいが変化し、10年、20年たった後にプーアル茶ならではのおいしさになるように設計されています。
このように完成時のみならず、十年以上に及ぶ熟成による変化を見据えてのブレンディングはほかのお茶にはなく、一朝一夕では到達できないプーアル茶ならではの芸術です。
「配方」を行うことによっていろいろな個性を持ったプーアル茶が作られます。 レシピ番号7532は三級茶葉をメインとして若芽の分量を増やしたつくりで香り高く、コクのある仕上がりですが、茶葉が詰まっているため熟成が難しいとされます。
ほかにもいろいろなレシピ番号があり、それぞれのおいしさを持ったプーアル茶に仕上げられています。
テーマある茶作り
布朗山の5級茶葉で作られた「金大益」は7542よりも一回り成長した5級茶葉で作ることでこれまでにない「強い味」のプーアル茶として21世紀最高の配方茶ともされます。
2002年に孟海茶廠によって作られた「金大益」は布朗山の5級茶葉で作らられています。「標準茶」である7542よりも一回り成長した5級茶葉で作られていることから別名「五級青餅」とも呼ばれています。
「標準茶」より成長した茶葉、そしてもともと強い味で知られる布朗山茶を使用することで、これまでにないパンチの効いたプーアル茶に仕上がっています。班章茶のような「強い味」を実現した金大益は21世紀最高の配方茶の一つとされています。
一方の大益緊磚茶 黄片磚は同じ布朗山ですが「黄片茶葉」と呼ばれる成長しすぎて通常のプーアル茶づくりには使用されない茶葉をテーマに作られています。
黄片茶葉は成長しきった茶葉なので枯れた味わい、独特の薬味がある一方茶葉としてのうまみの乏しくなっています。そこでこの大益緊磚茶 黄片磚は表面に同じ布朗山の早春3級茶葉を配方することで「珍味」ともいえる黄片茶葉にプーアル茶としてのうまみを持った充足感のある黄片茶を実現しています。
配方が作る茶廠の「顔」
プーアル茶を作る茶廠は配方茶でそれぞれの個性を表現します。
下関茶廠の「T8653」は煙味のある五級茶葉に春茶葉を合わせ鉄餅に仕上げています。鉄餅とすることで茶葉の香りを鉄餅の中に閉じ込め、超長期の熟成を経ても春の香りを逃さないプーアル茶は下関茶廠得意の風味付けです。
易武山の代表的銘茶「易昌號」は昌泰茶業の顔でもあります。
易武山茶のみで作られている「易昌號」ですが、その作りは繊細です。易武山茶といえばその「幽玄」な味わいで知られていますが、易昌號作りでは原料となる易武山の晒青毛茶を一つ一つをグレード分けし、配方して易昌號の味わいを創ります。
幽玄な易武山茶の味わいの余白をさらに際立たせることで、易武山茶としての輪郭をあざやかに浮かびあがらせたおいしさを作り出しています。
安定した味づくり
1970年代から毎年、そして最も多く作られる7572はまた、熟茶の基準品です。
安定して発酵が進むよう、やや大き目の七級茶葉をメインとして甘みを引き出す一方、ともするとぼやけた味になりがちな大茶葉レシピを引き締めるため、より等級の高い茶葉をブレンドして「基準品」にふさわしい熟茶に仕上げています。
自然の恵みである茶葉は同じ産地であっても年ごとの出来にばらつきがあり、また発酵時の味わいにもムラが出ることもあります。そのような時でも配方する茶葉の種類を調整することで毎年安定したクオリティのプーアル茶を作り続けることを可能としています。
自然の恵みだけではない、茶人アイデア、そして職人の技術力から生み出される「配方茶」はプーアル茶文化の結晶であり芸術です。